シリアで亡くなられたジャーナリスト山本美香さんが早稲田大学大学院の授業の中で最後に学生に残した言葉を紹介します。彼女の生き方に裏打ちされたこの言葉はジャーナリストではない私にも強く響きました。 あらためて山本さんのご冥福をお祈りいたします。
日本で暮らす私たちにとって戦争は遠い国の出来事と思うでしょう。しかし、世界のどこかで無辜(むこ)の市民が命を落とし、経済的なことも含め危機に瀕
(ひん)している。その存在を知れば知るほど、どうしたら彼らの苦しみを軽減することができるのか、何か解決策はないだろうかと考えます。
紛争の現場で何が起きているのか伝えることで、その国の状況が、世界が少しでも良くなればいい。報道することで社会を変えることができる、私はそれを信じています。
「日本にかかわること」がニュース選択の重要なポイントのひとつであることは否定しません。しかし、たとえば世界の安全は日本の安全につながりま
す。人道的な見地からも目をそらしてはいけない大切なことがたくさんあるはずです。「仕方がないこと」「直接関係がないこと」と排除してしまうのでは、
ジャーナリズムの役目を果たしているとはいえません。そうした広がりのない視点と態度は形を変えながら私たち自身にかえってきます。内外問わず、目が届き
にくい、忘れられがちな問題を掘り起こしていくこともメディアの責務としてあります。
感想の中で、視聴率重視のテレビ業界への不信感があ
りました。視聴率にかかわらず、やっておかなければならないことをやる。そのためには、今のメディアの中でどう表現すれば、放送に至ることができるのか、
企画を通すことができるのか、取材者、作り手としての力も磨いていかなければなりません。
社会にはさまざまな考え、職業、立場の人たちがいます。メディアの世界に身を置くと、力を持っていると勘違いしてしまうことがあります。高みから物事を見るのではなく、思いやりのある、優しい人になってください。