私の剣道の腕前は未熟なんですが、私の使っている剣道具はどこにいっても自慢できる秀逸のものです。
「梅澤剣道具店」はその自慢の道具を作っている地元熊谷の剣道具店ですが、店主の梅澤さんは小手、面、胴、垂、と全てを作ることの出来る伝統のわざと昔ながらの職人気質を持った数少ない本物の剣道具師です。彼は、単なる店主と顧客という関係を超えて、私の剣道生活には無くてはならない存在になっています。
梅澤さんと長くお付き合いさせてもらってつくづく思うのは日本の職人と職人文化の危機ということです。利潤を追求を第一として安い素材と未熟な技術で作られる粗悪な剣道具が大量生産されていく中で、いい素材を吟味し伝統の技で手間をとって作っていくことが非常に難しくなっているという現在の剣道具職人をとりまく危機的な環境を実感せざるをえません。
これは、何も剣道具の世界に限った事ではないですよね。今や日本の職人文化と呼ばれるものの多くが消滅していっています。剣道具など武道や古典芸能に関する世界は、危機的状況でありながらもまだ残っているだけましなのかもしれません。昔ならたくさんあった日常生活の中での職人文化はもう殆ど生き残っていないでしょう。
幕末当時、外国人がその技術の高さに驚愕したという日本の職人の技術。このすばらしき日本の文化を単に時代の流れだからといって、こうまで消滅させていいのでしょうか。
現在の日本人の混迷ぶりを見ると、こういう文化をなくしてきてしまったことと深く関係がある気がしてなりません。
私個人にとってはもちろんですが、そういった意味においても「梅澤剣道具店」は貴重な存在だと思っている今日この頃です。